「今日の気分」で服を選ぶようになった
朝、クローゼットの前に立つ。
今日の天気は曇り。予定は打ち合わせが一件。じゃあ、無難なネイビーのブラウスに、黒のパンツ。いつもの組み合わせ。迷う時間はゼロ。安全策で一日が始まる。
ずっとこうやって服を選んでいた。天気、予定、TPO。全部、外側の条件で決める。自分の気分は判断基準に入っていなかった。
ある朝、試しに自分に聞いてみた。「今日、何が着たい?」
少し戸惑った。聞かれ慣れていない質問だったからだ。
✦ ✦ ✦
「今日の気分で選ぶ」と聞くと、わがままに聞こえるかもしれない。
でもこれは、朝一番に自分の感覚を確認する練習だ。
「今日、何が着たい?」と自分に聞くためには、今の自分の気分を感じ取る必要がある。元気なのか、静かな気分なのか、少しだけ冒険したいのか、安心していたいのか。
この問いに答えるために、自分の内側に耳を澄ませる。たった数秒のことだけれど、その数秒間、自分の感覚と向き合っている。
天気や予定で選ぶときは、外の条件に自分を合わせている。
気分で選ぶときは、自分の条件に服を合わせている。
方向がまるで逆だ。
✦ ✦ ✦
気分で服を選ぶようになって気づいたことがある。
自分の気分には、思った以上にバリエーションがあった。
以前は毎朝「普通」だと思っていた。でも「何が着たい?」と聞くようになると、「今日はちょっと柔らかい色がいい」とか「今日はぱきっとしたものが着たい」とか、微妙な差が見えてくる。
その差を拾い上げて服を選ぶと、着たときの気分がまったく違う。無難な一着を着た日と、自分の気分で選んだ一着を着た日では、鏡の前での表情が違う。
自分の感覚で選んだ服を着ている自分は、なんとなく好きだ。その「なんとなく好き」が一日を少し明るくしてくれる。
✦ ✦ ✦
毎日気分で選ぶのが難しければ、週に一日だけでいい。
明日の朝、クローゼットの前で、天気を見る前に自分に聞いてみてほしい。
「今日、何が着たい?」
答えが出なくてもいい。「なんとなくこっち」くらいの感覚で十分だ。
その「なんとなく」が、自分の感覚を信じる練習になる。
——その一着を着て家を出たとき、いつもの通勤路がほんの少しだけ違って見えたら、それは自分の気分を大切にした朝のおかげだ。
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