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プリンセスマインド

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ビューティー STEP3

加工した自分の顔を見て、何も感じなかった夜

加工した自分の顔を見て、何も感じなかった夜

補正を全部かけ終わったあとの、静けさ

友達と撮った写真の写りが、どうにも気に入らなかった。アプリを開く。肌をなめらかに。輪郭を少し細く。目をほんの少し大きく。明るさを上げて、完成。

画面の中の顔は、たしかに「整って」いた。SNSで見慣れた、正解に近い顔。なのに、それを見たあなたの胸は、不思議なくらい動かなかった。「いいじゃん」でも「かわいい」でもなく、強いて言えば、無。

きれいになったはずなのに、何も感じない。それどころか、数秒見ているうちに、画面の中の人が少し他人に見えてきた。


加工とは、正解への接近である

加工アプリがやっていることを、構造として見てみる。

肌は均一に、輪郭はシャープに、目は大きく。補正のスライダーは、すべて「世間の正解」の方向に向かって設計されている。つまり加工とは、あなたの顔を、流通している正解のテンプレートに近づける作業だ。

そして、正解に近づくとは、平均に近づくということでもある。あなたの顔から、あなた固有の情報——左右で少し違う眉、笑うと出る線、その日の肌の調子——が削られて、誰のものでもない「整った顔」の成分が増えていく。

完成した画像は、たしかに減点の少ない顔だ。でも同時に、あなたの情報量がいちばん少ない顔でもある。


ときめきは、固有性に宿る

ここで、胸が動かなかった理由がわかってくる。

ときめきという反応は、正解に対しては起きない。テンプレート通りのものを見て、人は感心はしても、ときめきはしない。ときめきが起きるのは、固有のものに触れたときだ。その人だけの組み合わせ、その人だけの歴史、その日だけの空気。

あなたが誰かを「いいな」と思うとき、思い出してほしい、それはたいてい完璧な瞬間ではない。笑いすぎて崩れた顔とか、ふとした横顔とか、その人らしさが漏れた瞬間だ。ときめきのセンサーは、最初から固有性を検出するようにできている。

加工後の顔に何も感じなかったのは、センサーの故障ではない。むしろ正常に作動した結果だ。固有性が削られた画像に対して、センサーは正しく「検出なし」と返した。あなたの感覚は、ちゃんと生きている。


加工が悪いという話では、ない

加工をやめましょう、という話をしたいのではない。友達と盛れた写真ではしゃぐのは楽しいし、それは遊びとして全然いい。遊びとして使っているかぎり、アプリはただの玩具だ。

気をつけたいのは、加工後の顔が「本来あるべき私」に、いつのまにか昇格するときだ。補正後を基準にすると、鏡の中の素の顔が「未補正の、欠陥のある状態」に降格する。毎朝、完成品と未完成品を見比べる生活が始まる。玩具が採点者に変わる、いつもの構造だ。

基準にしていいのは、ときめきが鳴るほうだと思う。そして今夜わかったとおり、ときめきは補正後には鳴らなかった。


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消す前に、もう一度だけ

正解に寄せた顔には、ときめきが宿らない。ときめきは、あなたにしかない情報のほうに宿る。

もし加工前の写真がまだ残っていたら、消す前に、もう一度だけ見てみてほしい。

写りは良くないかもしれない。でもそこに写っているのは、欠陥品ではなく、あの日のあなただ。笑った角度も、肌の調子も、全部その日一回きりの情報。

消してもいい。ただ、「劣った版だから消す」のか「今日はこっちの気分じゃないから消す」のか、それだけ確かめてから消してほしい。その確認が、基準を自分の手に戻す練習になる。

PRIELLE編集部

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PRIELLE 編集

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