スキンケアを丁寧にやるようになって気づいたこと
スキンケアは、ずっと「処理」だった。
クレンジングで落として、洗顔で洗って、化粧水をバシャバシャつけて、乳液を雑に塗る。全工程3分。テレビを見ながら。スマホを触りながら。自分の顔なんて見ていない。
肌のためにやっている、というより「やらないと荒れるからやっている」。義務。作業。消化。
ある夜、ふと手を止めてみた。化粧水を手のひらに出して、両手で温めて、顔を包み込むように押し当てた。目を閉じた。
そのとき初めて、自分の肌の温度を感じた。
✦ ✦ ✦
自分の肌に触れるという行為を、ちゃんと意識したのはあの夜が初めてだったかもしれない。
毎日触っているはずなのに、触れている感覚がなかった。手が肌の上を滑っているだけ。自分の顔に触っているという実感がない。
丁寧にやるようになって気づいたのは、スキンケアが自分の身体と対話する時間だということだ。
今日の肌は乾いているな。
ここが少しザラついているな。
頬が冷たいな。
——そういう情報を、自分の手のひらが拾ってくる。それは肌の状態を知る行為であると同時に、自分の身体に注意を向ける行為でもある。
自分の身体に注意を向けるということは、自分を気にかけているということだ。
✦ ✦ ✦
スキンケアを丁寧にやるようになってから、もう一つ変わったことがある。
鏡の中の自分を嫌いだと思う回数が減った。
雑にやっていた頃は、鏡を見る時間が「欠点の確認」だった。
毛穴が目立つ。
くすんでいる。
目の下のクマがひどい。
——自分の顔を見るたびに、減点していた。
でも丁寧にケアするようになると、鏡を見る時間の意味が変わる。
「昨日より少し調子がいいかも」
「このクリーム、合ってるかもしれない」
——減点ではなく、小さな変化を見つける時間になった。
肌の状態が劇的に変わったわけではない。変わったのは、自分の肌を見る目だ。
自分に手をかけている、という事実が、自分を見る目を優しくしてくれる。
✦ ✦ ✦
高い化粧品を買う必要はない。今使っているもので十分だ。
変えるのは、やり方だけ。
今夜のスキンケアで、一つだけ試してほしい。
化粧水を手のひらに出したら、両手で3秒だけ温めてから顔につける。そして手のひらで顔を包んだまま、5秒だけ目を閉じる。
その8秒間、自分の肌の温度を感じてみてほしい。
たった8秒。でもその8秒は、今日一日で最も丁寧に自分に触れた時間かもしれない。
——その時間を毎晩持てるようになったとき、鏡の中の自分を「悪くない」と思える日が、少しずつ増えていくはずだ。
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