お風呂を「入らなきゃ」から「入りたい」に変えた
夜10時。ソファに沈んでいる。
お風呂に入らなきゃ。
わかっている。でも動けない。あと5分。あと10分。気づけば11時を過ぎていて、もう面倒くさいけどさすがに入らないわけにはいかない。重い腰を上げて、義務的にシャワーを浴びて、出てくる。
お風呂は、一日の中で最も「やらなきゃいけないこと」だった。
ある日、一つだけ変えてみた。入浴剤を入れた。ドラッグストアで見つけた、ラベンダーの香りのやつ。300円くらい。
たったそれだけで、お風呂に向かう足取りが変わった。
✦ ✦ ✦
「入らなきゃ」と「入りたい」の差は何だろう。
やっていることは同じだ。服を脱いで、身体を洗って、湯に浸かって、出る。物理的なプロセスはまったく変わらない。
変わるのは、その時間を「義務」と捉えるか「自分をもてなす時間」と捉えるかだ。
「入らなきゃ」は義務。清潔を維持するためのタスク。早く終わらせて次のことをしたい。
「入りたい」は欲求。自分のために用意された時間。ゆっくり過ごしたい。
同じ行為なのに、フレームが変わるだけで体験が変わる。そして体験が変わると、自分への扱い方が変わる。
✦ ✦ ✦
入浴剤を入れるようになって気づいたことがある。
お風呂の準備をしている時間が、楽しくなった。
「今日はどの香りにしよう」と選ぶ。
お湯を張る。
入浴剤が溶けていくのを見る。
——この一連の流れが、自分のために場を整える行為になっている。
誰かが来るからきれいにするのではない。自分が入るから整える。
自分のために場を用意するという行為は、「あなたはもてなす価値がある」と自分に伝えている。
大げさに聞こえるかもしれない。たかが入浴剤一つで。でも、その「たかが」を自分にやってあげるかどうかの差が、長い目で見ると自分との関係を変えていく。
✦ ✦ ✦
入浴剤でなくてもいい。
お気に入りのボディソープに変えてもいい。
防水スピーカーで好きな音楽を流してもいい。
少しだけいい香りのシャンプーを使ってもいい。
キャンドルを灯してもいい。
何でもいい。お風呂の時間に「ちょっと嬉しい」を一つだけ足す。
今夜、試してみてほしい。
いつもの「入らなきゃ」の前に、一つだけ自分のための準備をする。
その準備をしている時間から、もうお風呂は「義務」ではなくなっている。
——お風呂上がりに「気持ちよかった」と思えたら、それは自分を一つもてなせた証拠だ。明日もきっと、「入りたい」に変わっている。
RELATED ARTICLES
ライフスタイル 知らないことを知るのが、楽しくなってきた
本も、映画も、習い事も、語学も、資格も。「教養のため」をやめて「興味があるから」を選び続けたら、世界が少し広く見えてきた話。
READ MORE
ライフスタイル 「教養のため」じゃなくて「興味があるから」を選ぶ
「読むべき本」「観るべき映画」をこなしてきた私が、ある日、自分が本当に興味があることだけを追いかけ始めた。動機の純度の話。
READ MORE
ライフスタイル 資格の勉強を始めたのは、転職のためじゃなかった
「キャリアのため」で何度も挫折した資格の勉強。でも今回は、ただ「学ぶ自分が好きだから」だった。動機を変えただけで、勉強が苦しくなくなった話。
READ MORE