YouTubeのストレッチ動画を、一緒にやってみた夜
夜、ベッドに入る前。スマホで何の気なしにYouTubeを開いたら、「寝る前5分」と書かれたストレッチ動画がおすすめに出てきた。サムネイルの女性は、部屋着のままマットの上で気持ちよさそうに伸びをしている。
なぜか、その夜は再生ボタンを押していた。
いつもなら「どうせ続かない」と思ってスワイプする。宅トレも、3日やっては止めるを何度も繰り返してきた。ジムも、ダイエットアプリも、結局は途中で投げ出した。だから運動の動画なんて、自分には関係ないものだと思っていた。
でもその夜は、なんとなく、画面の中の人に合わせて体を倒してみた。たった5分。汗もかかない。息も上がらない。終わったあと、「これ、運動って言えるのかな」と思うくらいの軽さだった。
それなのに、その夜の眠りは、いつもより少しだけ深かった気がした。
「続けなきゃ」と思った瞬間に、終わっていた
これまでのあなたの運動が続かなかったのは、意志が弱かったからではない。
思い出してほしい。ジムに入会したとき、あなたは何を思っていただろうか。「週3回は行こう」「3ヶ月で5kg落とそう」「せっかくお金を払ったんだから元を取らなきゃ」。最初から、ゴールと義務がセットになっていた。
宅トレを始めたときもそうだ。「毎日やる」と決めて、できなかった日に「ああ、また続かなかった」と自分を責めた。運動そのものより、「続けられない自分」と向き合うことのほうが、ずっとしんどかった。
つまりあなたは、運動が嫌いだったわけじゃない。「続けなきゃいけないもの」「結果を出さなきゃいけないもの」として運動を捉えた瞬間に、それが苦行に変わっていただけだ。
5分のストレッチが続いたのは、そこに「続けなきゃ」も「痩せなきゃ」もなかったから。ただ、夜に体を伸ばしたら気持ちよかった。それだけだった。
体は、いつもあなたの帰りを待っている
一日中、座りっぱなしで仕事をして、満員電車に揺られて、家に帰ってまたスマホを見る。あなたの体は、ずっと縮こまったまま、置き去りにされている。
ストレッチをすると、その置き去りにしていた体に、久しぶりに意識が戻る。「ああ、ここがこんなに固まってたんだ」「肩、こんなに上がってたんだ」。動画の人の声に合わせて伸びをしながら、あなたは自分の体と、少しだけ会話をしている。
これは「痩せるための運動」ではない。自分の体に「今日もおつかれさま」と声をかける時間だ。
痩せるかどうかは、わからない。
たぶん、5分のストレッチで体重は変わらない。
でも、自分の体を気にかける習慣は、確実にあなたの中に芽を出す。そしてその芽は、「もっと動いてみようかな」「明日はもう少し長くやってみようかな」という、誰にも強制されていない、あなた自身の中から湧いたときめきに、いつか変わっていく。
その順番が大事だ。「痩せたいから動く」のではなく、「体と仲良くなったから、もっと動きたくなる」。前者は他人の物差し。後者は、あなたの物差しだ。
✦ ✦ ✦
完璧にやらなくていい。毎日やらなくてもいい。
やりたくない夜は、やらなくていい。それで「また続かなかった」なんて思わなくていい。これは続けるかどうかを試されるテストじゃない。あなたが、あなたの体に優しくする、ただそれだけの時間だ。
今夜、寝る前に、たった一つの動画を再生してみる。
5分でいい。3分でもいい。途中でやめてもいい。動画の人に合わせて、ゆっくり体を伸ばしてみる。終わったあと、ほんの少しでも「気持ちよかったな」と思えたら、それで十分だ。
その「気持ちよかったな」は、誰のためでもない。あなたが、あなたのために感じた、いちばん最初の自己満足だ。
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