「私はもう、このランクのものを使う人だ」と決めた日
ある日、新しい財布を選んでいた。
これまでは、プチプラの財布を、何年かに一度買い替えていた。「財布なんて、お金が入れば何でもいい」と思っていた。今回も、同じくらいの値段のものを探していた。
でも、なんとなく、デパートのフロアに上がってみた。革製の、シンプルで上品な財布が並んでいる。いつもの財布の、何倍もする値段。手に取ったとき、ふと、自分に問いかけた。
「私は、これからどんなものに囲まれて生きていきたいんだろう」。
これまでのプチプラの財布を持ち続ける自分。デパートの革財布を持つ自分。どちらが、自分にとってしっくり来るだろうか。
少し考えて、革財布を買った。値段は、いつもの財布の5倍以上。でも、それは「贅沢」というより、「決めた」という感覚だった。
私はもう、こういうものを使う人になる。そう、自分で決めた。
自分のランクは、誰が決めているのか
私たちはいつも、無意識に「自分のランク」を持っている。
「私はプチプラを買う人」「私はデパコスを買う人」「私はファストファッションを着る人」「私はブランドを持つ人」。自分はこのへんの人間だ、という暗黙の自己ランクが、買い物のたびに発動している。
そして、ほとんどの人は、その自己ランクを「過去の習慣」で決めている。学生時代からプチプラだったから、社会人になってもプチプラ。デパコスは高校生の頃から「私のじゃない」と思ってきたから、今もそう思っている。過去の自己評価が、現在の選択を縛り続けている。
でも、考えてみてほしい。あなたは、もう、何年も前のあなたじゃない。働いて、自分でお金を稼いで、大人になっている。プチプラしか買えなかった頃のあなたと、今のあなたは、同じ人間ではない。
それなのに、買い物のたびに、無意識に「私はこのへん」を選び続ける。本当は手が届く範囲のものすら、「私のじゃない」と最初から排除している。自己ランクを、自分で更新していない。
自己ランクは、自分で書き換えられる
自己ランクは、誰かに決められたものじゃない。自分で書き換えられる。
きっかけは、「私はもう、このランクのものを使う人だ」と、自分で宣言することだ。
革財布を買った瞬間、あなたは自分に、こう言っている。「これからの私は、プチプラの財布じゃなく、革財布を持つ人だ」。それは見栄でも背伸びでもない。自分の現在地を、自分で更新することだ。
そして、自己ランクを上げると、面白いことが起こる。一度「これを使う人」と決めると、もう、雑な選び方には戻りにくくなる。財布を革のものに変えたら、それに似合うバッグが欲しくなる。バッグを変えたら、それに似合う服を選ぶようになる。自分への扱いが、ものを通して、少しずつ底上げされていく。
これは、贅沢の連鎖じゃない。「自分は、これくらいのものに値する」という感覚の、静かな積み重ねだ。
もちろん、無理して全部を一気に上げる必要はない。お金の許す範囲で、自分が「これに値する」と思える一つから。でも、一度「私はこのランクの人だ」と決めると、その決定は、長く効いてくる。古いプチプラに戻る理由が、なくなっていく。
自己ランクを上げることは、自分への信頼を、ものを通して育てることだ。
✦ ✦ ✦
次にものを買おうとしたとき。
「いつもの値段帯」を選ぶ前に、一度、自分に問いかけてみる。
「私は、これからどんなものに囲まれて生きていきたい?」
その答えが、いつもよりちょっと上のランクなら、思いきって、そちらを選んでみる。
財布、バッグ、靴、時計。何でもいい。一つだけ、「私はもう、このランクのものを使う人だ」と、自分で宣言できるものを、買ってみる。
それは、見栄でも贅沢でもない。あなた自身の現在地を、自分で更新する宣言だ。
「私には、まだ早い」と思っているうちは、いつまで経っても、自己ランクは上がらない。誰かが認めてくれるのを待っても、来ない。自分で「もう、私はこっち側だ」と決めるしかない。
決めた瞬間から、世界は少し変わる。あなたが、自分への扱いを、変えたから。
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