習い事を始めるのに、年齢は関係なかった
ずっと気になっていた習い事があった。
陶芸でも、フラワーアレンジメントでも、ピラティスでも、何でもいい。なんとなく「やってみたいな」と思っていた。でも、なかなか踏み出せなかった。
理由は、いつも同じだった。
「今から始めても遅いんじゃないか」
「初心者で、若い子に混ざるのは恥ずかしい」
「もっと早く始めればよかった」。
ある日、ふと、その「もう遅い」の中身を考えてみた。遅いって、何に対して遅いんだろう?
プロになるには遅い、かもしれない。誰かより上手になるには遅い、かもしれない。でも、ただ「やってみたい」を満たすことに、遅いも早いもなかった。
体験レッスンに申し込んだ。教室の中で、私は確かに、他の人より少し年上だった。でも、それは何の問題でもなかった。先生は丁寧に教えてくれて、初めての作業は思っていた以上に楽しかった。
帰り道、なぜもっと早く始めなかったんだろう、と思った。でも同時に、今日が、いちばん早い日だったとも、思った。
「もう遅い」の正体
新しいことを始めるとき、「もう遅い」という声が湧いてくる。
ピアノは子供の頃から、絵は若いうちから、語学は20代のうちに、運動は早いうちから。世の中には、「若いうちにやるべきこと」のリストが、暗黙にある。それを過ぎてから始めようとすると、「もう遅い」という声が、いつもブレーキになる。
でも、その「遅い」は、何を基準にしているだろうか。
たいていの場合、「人より上手になるには」「プロになるには」「結果を出すには」遅い、という意味だ。他人と比べて、上の位置に行くには遅いということ。
でも、習い事は、人と競うためのものだろうか。プロを目指すためのものだろうか。
違う。ただ「やってみたい」を満たすためのものだ。
陶芸を始めたい人は、陶芸家になりたいわけじゃない。土に触れて、自分の手で何かを作る時間が、欲しいだけだ。
フラワーアレンジメントを始めたい人は、花屋になりたいわけじゃない。花に触れて、美しい時間を過ごしたい、それだけだ。
その目的に、年齢は関係ない。30代から始めても、40代から始めても、60代から始めても、その時間の豊かさは、何も変わらない。
「もう遅い」と言って諦めるのは、他人の物差しを、自分に当てはめているだけだ。
「やってみたい」を満たすことの価値
習い事を始めて、何が変わるだろうか。
技術が身につく、というのもある。でも、それより大きいのは、「やってみたい、を実際にやれた」という事実だ。
人は、年齢を重ねるほど、「やってみたい」を諦める数が増えていく。子供の頃は、思いついたことを、すぐに試した。でも大人になると、いろんな理由をつけて、新しいことから遠ざかる。「忙しいから」「お金がないから」「年齢的に」。
そして、諦めるたびに、「自分はこういう人間だ」という固定された自己イメージが、強くなる。「私は、新しいことを始められない人」「私は、現状維持の人」。
でも、一つ「やってみたい」を実際にやれただけで、その自己イメージは揺らぐ。「私は、新しいことを始められる人だ」という、小さな新しい自己認識が生まれる。
そして、その新しい自己認識は、習い事以外のところにも広がる。「あれを始められたんだから、これも始められるかもしれない」。一つの「始める」が、次の「始める」を呼ぶ。
年齢を理由に諦めることに慣れていた人が、年齢を超えて何かを始められたとき、それは小さな革命だ。自分の人生は、年齢で決まっていない。自分で決められる。そのことに、行動を通して、気づいていく。
✦ ✦ ✦
ずっと「いつかやってみたい」と思っているのに、年齢を理由に諦めているものはないだろうか。
陶芸、料理教室、ピラティス、ダンス、絵画、音楽、語学、書道。何でもいい。
まず、体験レッスンに申し込んでみる。
申し込むだけだ。続けるかどうかは、まだ決めなくていい。一回だけ、行ってみる。
教室で、自分が少し年上かもしれない。最初は不慣れで、上手にできないかもしれない。それでいい。目的は、「やってみたい」を満たすことだけだ。
帰り道、ふと気づくはずだ。年齢を理由に諦めていたことが、こんなに簡単に始められたという事実に。
「もう遅い」は、ほとんどの場合、自分が作った言い訳だ。やってみたい気持ちに従う人に、遅いも早いもない。今日が、あなたの人生で、いちばん早い日だ。
RELATED ARTICLES
ライフスタイル 知らないことを知るのが、楽しくなってきた
本も、映画も、習い事も、語学も、資格も。「教養のため」をやめて「興味があるから」を選び続けたら、世界が少し広く見えてきた話。
READ MORE
ライフスタイル 「教養のため」じゃなくて「興味があるから」を選ぶ
「読むべき本」「観るべき映画」をこなしてきた私が、ある日、自分が本当に興味があることだけを追いかけ始めた。動機の純度の話。
READ MORE
ライフスタイル 資格の勉強を始めたのは、転職のためじゃなかった
「キャリアのため」で何度も挫折した資格の勉強。でも今回は、ただ「学ぶ自分が好きだから」だった。動機を変えただけで、勉強が苦しくなくなった話。
READ MORE