彼がいない時間が怖いのは、自分との時間が怖いから
彼が出張に行くと、途端に落ち着かなくなる。
別にやることがないわけではない。録り溜めたドラマもあるし、読みかけの本もある。友達を誘うこともできる。でも、彼がいないというだけで、何をしても手につかない。
スマホを見る。返事を待つ。時計を見る。まだ二時間しか経っていない。
この落ち着かなさの正体を、ずっと「寂しさ」だと思っていた。彼が好きだから寂しい。それは自然なことだ、と。
でも本当にそれだけだろうか。
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寂しさと依存の間には、微妙だけれど決定的な違いがある。
寂しさは「彼に会いたい」だ。彼がいない時間も自分の時間として過ごせるけれど、ふとした瞬間に相手のことを思い出す。それは恋愛の自然な一部だ。
依存は「彼がいないと自分を保てない」だ。彼がいない時間が空白になる。何をしても満たされない。自分一人では、自分の機嫌をとることも、自分を楽しませることもできない。
後者の場合、怖いのは「彼がいないこと」ではない。
「彼がいない自分」と向き合うことが怖いのだ。
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彼がいるとき、あなたは彼の存在によって自分を定義できる。「彼女である自分」「誰かに必要とされている自分」「一人ではない自分」。彼がいることで、自分の輪郭がはっきりする。
でも彼がいなくなると、その輪郭が消える。
残るのは、何の肩書きもない、誰の「彼女」でもない、ただの自分だ。そのただの自分と一対一で向き合う時間が、耐えられないほど怖い。
なぜ怖いのか。
それは、「ただの自分」に価値があると思えていないからだ。
誰かの隣にいてはじめて自分に価値があると感じる。誰かに必要とされてはじめて存在意義を感じる。その構造の中にいる限り、一人の時間は常に「欠落の時間」になる。
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一人の時間を埋める方法は、彼に連絡することではない。
一人の時間を「欠落」ではなく「充実」に変えるには、自分との関係を育てるしかない。
大げさなことをしなくていい。
今日、彼に連絡したくなったら、その前に一つだけ自分のためにすることを決めてみてほしい。好きな飲み物を淹れる。一曲だけ好きな音楽を聴く。窓を開けて深呼吸する。
その数分間、あなたは誰かの「彼女」ではなく、自分自身として存在している。
その感覚に少しずつ慣れていくことが、一人の時間を怖くなくする唯一の方法だ。