「安いから」で選ぶのをやめた
ドラッグストアで、二つのハンドクリームを見比べていた。
一つは400円。もう一つは1,200円。手に取ったのは1,200円の方だった。パッケージが好きだった。香りも好きだった。でも、レジに向かう途中で棚に戻して、400円の方をかごに入れた。
「どうせハンドクリームだし」
その「どうせ」に、何が入っているかを考えたことがなかった。
✦ ✦ ✦
「安いから」で選ぶことは、節約として正しい。お金は大事だ。無駄遣いはしない方がいい。
でも、毎回「安いから」で選んでいるとき、その裏にはもう一つの判断が隠れている。
「私には、高い方を選ぶほどの価値がない」
400円のハンドクリームが悪いのではない。1,200円の方が好きなのに、「自分にはもったいない」と感じて手を引っ込める。その瞬間に起きていることが問題なのだ。
好きな方を選べない。気に入った方を買えない。理由は「お金がない」ではなく、「自分にそこまでかける許可が出せない」。
これは金銭感覚の話ではない。自己価値感の話だ。
✦ ✦ ✦
「安いから」で選ぶ癖がついていると、持ち物の一つひとつが「妥協の結果」になる。
財布を開くたびに見えるカード入れ。
毎朝手に取る歯ブラシ。
毎日使うマグカップ。
それらが全部「本当はこれじゃなかったけど、安かったから」で選ばれたものだとしたら、日常のあらゆる場面で自分に「あなたはこの程度でいい」と伝え続けていることになる。
逆に、一つでも「これが好きだから選んだ」と言えるものがあると、それに触れるたびに小さな肯定が生まれる。
「私はこれを選んだ。これが好きだから」
たった一つのハンドクリームでも、その選び方が変わるだけで、自分に対するメッセージが変わる。
✦ ✦ ✦
すべてを高い方に変えろという話ではない。そんなことをする必要はないし、できるわけもない。
ただ一つ、提案がある。
今月、何か一つだけ、「安いから」ではなく「好きだから」で選んでみてほしい。
ハンドクリームでもいい。ボールペンでもいい。コーヒーの銘柄でもいい。金額の差は数百円で十分だ。
大事なのは金額ではなく、「好き」を選択の基準にしたという経験を持つことだ。
その一つが、明日もう一つの「好き」を選ぶ力になる。
自分の「好き」は、自分にかけていいお金だ。
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