「自己満足」という言葉が、悪い意味じゃなくなった日
「自己満足」という言葉に、ずっとマイナスのイメージを持っていた。
「それって自己満足じゃない?」と言われたら、軽い批判だ。「独りよがり」「他人の役に立っていない」「自分のことしか考えていない」。そういう意味で使われることが多かった。
だから、自分の中で「自己満足」と感じる行動を、どこかで恥ずかしく思っていた。誰かのためじゃなく、自分のためにだけ何かをすることに、罪悪感があった。
ある日、「自己満足」という言葉が、いつもと違う響きで耳に届いた。
「自分が自分に満足できる」。文字どおりに読むと、これはむしろ、すごく健全なことではないか?
人に依存せず、他人の評価に頼らず、自分で自分を満たせる。それを「自己満足」と呼ぶなら、自己満足できる人は、いちばん自立した人じゃないか。
その日から、「自己満足」が、私の中で、悪い言葉じゃなくなった。
なぜ「自己満足」は、悪い意味で使われてきたのか
「自己満足」が、なぜ世の中でマイナスの意味を持つようになったのか、考えてみる。
たぶん、こういう文脈で使われてきたからだ。「あなたのその行動は、相手のためじゃなく、自分が満足したいだけでしょう」「それは独りよがりで、誰の役にも立たない」。
確かに、相手のためと言いながら自分の満足を押しつける、というケースはある。「親切心」を装いながら、自分が褒められたいだけ、というパターン。これは確かに、批判されるべき「自己満足」だ。
でも、いつのまにか、その文脈が拡大解釈されて、「自分のために何かをすること」全般が、なんとなく後ろめたいものとして扱われるようになった。
自分のためにお金を使う = わがまま。
自分のために時間を使う = 自己中心的。
自分のために頑張る = 利己的。
「自分のため」という言葉が、ネガティブな響きを持つ社会ができあがった。
特に、女性は、「人のために」を求められる場面が多い。家族のため、職場のため、誰かのため。「自分のため」を優先することに、罪悪感を感じやすい構造になっている。
だから、「自己満足」という言葉を、自分に向けるのが恥ずかしい。「私、自分のために頑張ってます」と言うことに、後ろめたさを感じる。
「自己満足できる」は、自立の証
でも、「自己満足」を、本来の意味で考え直してみる。
自己満足 = 自分が、自分に、満足している状態。
これは、すごく健全な状態じゃないか。誰かに「あなたはいい」と言ってもらわなくても、自分で自分のことをいいと思える。誰かに認められなくても、自分が自分を認めている。
逆に、「自己満足できない」状態を考えてみる。それは、自分の満足を、いつも他人に握らせている状態だ。誰かに褒められないと、満足できない。誰かに認められないと、価値を感じられない。誰かに必要とされないと、生きている意味がわからない。
これは、依存だ。自分の機嫌、自分の価値、自分の満足を、全部、他人にコントロールされている。
「自己満足できる人」は、その逆だ。他人の評価がなくても、自分で自分を満たせる。一人の夜も、誰にも会わない休日も、自分で自分を機嫌よくできる。これほど自立した状態は、ない。
そして、自己満足できる人は、人にも優しくなれる。なぜなら、自分が満たされているから、相手に何かを求めない。他人を、自分を満たす道具にしない。対等な関係を、自然に作れる。
自己満足は、独りよがりとは正反対だ。自己満足できる人ほど、人と健全な関係を結べる。
✦ ✦ ✦
「自己満足」という言葉を、もう一度、自分の中で定義し直してみる。
それは「独りよがり」じゃない。「他人を無視する」ことでもない。
「自分のことを、自分で満たせる」状態。
そう捉え直したとき、自己満足できる自分を、誇っていい。
自分のためにお金を使ったとき、「自己満足だな」と思えたら、それは罪悪感じゃなく、肯定だ。「私は、自分のために満足できる人間だ」と。
自分のために時間を取ったとき、「自己満足だな」と思えたら、それも肯定だ。「私は、自分の人生を、自分で満たせる人間だ」と。
「自己満足、いいじゃないか」
自分のことを、自分で満たせる。それより健全な状態は、たぶん、ない。
そして、自己満足できるあなたは、いつのまにか、人にも優しくできる人になっている。自分を満たしている人だけが、人に何かを与えられる。空っぽの器からは、何も注げない。
「自己満足」は、悪い言葉じゃない。あなたが、これから自分を満たしていくための、いちばん大切な言葉だ。
RELATED ARTICLES
マインドセット 「美人」と「美しい人」は、たぶん違う
美人と美しい人の違いはどこにあるのか。私たちが無意識に使い分けている二つの言葉から、選べない美しさと育てられる美しさの話をする。
READ MORE
マインドセット 笑いジワのある人を、きれいだと思った
笑いジワやシワが気になって落ち込む。でも他人の笑いジワは「きれい」に見えるのはなぜか。自分にだけ減点法を使う癖の正体を描く。
READ MORE
マインドセット 雨の日、傘を深く傾けてくれた先輩の横顔のこと
所作が美しい人とは何が違うのか。雨の日に傘を傾けてくれた先輩の何気ない仕草から、美しさの正体が「態度の形」であることを描く。
READ MORE