鏡の前で、ちょっと微笑めるようになった
鏡を見るとき、無意識に、しかめっ面をしていた。
化粧の出来栄えを確認するとき、肌の調子を見るとき、髪型をチェックするとき。表情は、いつも引き締まっていた。「ちゃんと整えなきゃ」「ここがダメ」「これも気になる」。検品するような視線で、自分を見ていた。
ある日、鏡の前で、ふと、口角を少しだけ上げてみた。
理由はない。なんとなく、いつもの厳しい顔の自分を、もう少し優しい顔で見てみたかった。
鏡の中の自分が、微笑み返してくれた。
その瞬間、なんだか少し、自分が好きになった気がした。
それからは、鏡を見るたびに、少しだけ口角を上げるようになった。最初は意識的に。でも、しばらくすると、それが自然になっていった。気づいたら、鏡を見るときの私の表情が、変わっていた。
あなたが鏡を見るときの顔は、自分への態度の鏡
鏡を見るときの自分の表情を、意識したことがあるだろうか。
たいていの人は、鏡を見るとき、無表情か、しかめっ面をしている。化粧を直すとき、髪を整えるとき、服を確認するとき。真剣に検品している顔。あるいは、「やっぱりダメだな」とがっかりしている顔。
これは、自分への態度の、いちばん正直な表れだ。
楽しいことを期待しているとき、人は自然に微笑んでいる。誰かを愛おしいと思っているとき、表情は柔らかくなる。鏡の前で笑顔になれないということは、自分を見ることに、楽しみも愛おしさも感じていないということだ。
そして、鏡の前で厳しい顔をしている自分を、毎日見続けると、自分の中で「自分は厳しく評価される対象だ」というイメージが固まっていく。鏡を見るのが、ますます嫌になる。悪循環だ。
これを断ち切るのは、簡単だ。鏡を見るときに、ちょっと口角を上げる。それだけ。たったそれだけで、自分への態度が、少しずつ変わっていく。
表情は、心を変えていく
「無理に笑顔を作っても、空虚なだけじゃないか」と思うかもしれない。
でも、実は、表情には、心を引っ張る力がある。
心が落ち込んでいるときに笑顔になるのは、難しい。でも、たとえ無理にでも口角を上げてみると、不思議と、ほんの少しだけ、気分が変わる。これは、表情が心に影響を与えるからだ。表情は、心の結果でもあるけれど、原因にもなる。
特に、鏡の前で微笑めるようになると、その効果は大きい。なぜなら、毎日見ている自分の顔が、ちょっとだけ優しい顔になるからだ。「自分は、こういう優しい表情で見てもいい存在なんだ」というメッセージが、毎朝、自分自身に届く。
そして、鏡の前で微笑めるようになった人は、不思議と、外の世界でも微笑みやすくなる。誰かと話すとき、知らない人とすれ違うとき、自然に表情が柔らかくなる。鏡の前での自分への態度が、世界への態度に、滲み出てくる。
逆に、鏡の前で厳しい顔をし続けている人は、外でも、無意識に厳しい顔をしている。それは、人にも伝わる。「なんだか怖い人」「近寄りがたい人」という印象を、自然と作ってしまう。
鏡の前で微笑むことは、自分への優しさであり、同時に、世界への優しさでもある。
✦ ✦ ✦
明日の朝、鏡の前に立ったときに。
いつもの「検品」の顔ではなく、ほんの少しだけ、口角を上げてみる。
完璧な笑顔じゃなくていい。爽やかなスマイルでなくていい。ただ、口角を、ほんの数ミリだけ。
鏡の中の自分が、微笑み返してくれる。その瞬間の感覚を、ちゃんと味わってみる。
「いま、ちょっと、自分にやさしくしたな」。
その小さな実感を、毎朝、自分にプレゼントする。最初はぎこちなくてもいい。慣れてくると、自然になる。気づいたら、鏡を見るときの自分の表情が、変わっている。
そして、ある日気づくはずだ。鏡を見るのが、ちょっと好きになっている自分に。
それは、鏡の中身が変わったからじゃない。鏡を見るあなたの態度が、変わったからだ。
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